物損の示談を先行して行う場合の注意点
1 人的損害と物的損害は分けて示談可能
交通事故においては、慰謝料や休業損害などの人的損害(以下「人損」と言います。)と車両の修理費用や携行品などの物的損害(以下「物損」と言います。)を別々に示談することができます。
実務においても、むしろ人損と物損は分けて処理されることが多く、人損よりも先に物損の示談を行うケースも多くあります。
しかし、物損の示談を先行する場合には、いくつかの重要な注意点がありますので、以下にその主なポイントを解説します。
2 示談書に「清算条項」が含まれるリスク
物損の示談書や免責証書に、例えば「本件事故に関する全ての損害が解決された」といった趣旨の清算条項が含まれている場合、物損の示談後に人損の請求することが難しくなってしまいます。
物損だけでなく、人損についても含めた全ての損害について解決したようにも読めてしまうからです。
そのため、物損を先に示談する場合は、示談書の内容を慎重に確認し、その示談が「物損に限ってものである」という趣旨の文言が明記されていることを確認しましょう。
ご自身でそのような趣旨の文言が入っているか否かが分からない場合は、弁護士に内容をチェックしてもらうことも有効です。
3 事故状況や過失割合への影響
物損の示談を先に行う場合、示談書に、事故状況や過失割合が記載されていることがあります。
これらの記載がある示談書に署名・捺印をすると、事故状況や過失割合についても、双方が最終合意をしたと捉えられる可能性があるため、人損の示談交渉時に改めて事故状況や過失割合を争いたいと思った場合の障害になりかねません。
そのため、物損の示談を先に行う場合は、記載されている事故状況や過失割合に、ご自身の意向に反するものがないか、しっかりと確認をすることが重要です。
分からないことがあれば、弁護士にチェックしてもらうことも有効です。
4 損害賠償請求権の時効
物損と人損の損害賠償請求権の消滅時効期間はそれぞれ異なります。
物損の損害賠償請求権の消滅時効期間は原則として3年、人損については5年です。
そのため、物損の示談を先に締結した場合でも、人損についても損害賠償請求権の消滅時効期間が経過するまでにきちんと請求をするようにしましょう。
時効期間に不安があれば、弁護士に相談していただくことも有効です。
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